(詳しく調べようと思いながらそのままにしていた下記をメモ代わりにアサブロに載せておく)
手術で救える病院と救えない病院の違いとは?
(手術で救える病院と救えない病院の違いとは? 消化器外科のFTR率に焦点を当てた日本の研究から 2024年07月26日
[URL] 。)
この情報は全ての専門医からは反論が出そうな論文であるがそんなことをよく言ったものだと拍手を送りたいと思う一方、詳しく調べようと思ってもいながら放置したままになっていたものである。
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今の世の中の医療はEBMに基づく考え方が正当なものだと捉えられている。しかしEBMとされる根拠の大部分は疫学的な論法によるものが殆どである。従ってその場合は統計学的には正しいとしても個々人の医療にそのまま当てはめようとする場合は落とし穴が存在するので注意せよということでもある。現場の医療はそれをわきまえた上で個々に適正な医療を行わなければならないのは周知の事である。
手術の腕も同様に術数件数が多ければ多い程手術成績も向上する、だから集約化すべきだとの方針で医療体制も構築されてきた。即ちある手術で100人行った医師と10人行った医師の腕を比べた場合100人行った医師の方が腕が上がる、との捉え方が正しいとされる。これは統計学的には正しいかもしれないが個々の医師に当てはめた場合は1例1例に込めた内容によっては10例行った医師の方が腕が良い場合もあるということでもある。
この論文の結論は、手術成績が良好な理由は大病院だからではなく、学会認定の有無でもなく、多職種がカンファレンスに参加しているからでもなかった。これまで大病院の方が成績が良いとか手術数が多い方が成績が良いとか、表面的に捉えられた理由のみが付けられて説明され、しかも実際それで医療政策も組み立てられてきた感があった。
今回の論文は、その考え方から、一歩踏み込んで、深く掘り下げられた論文である。しかもこの論文は日本の大学から提出されたものである。現在の日本の政策の流れに待ったをかけるような重要なデータではないかとも思った。この論文を論評したこの著者も立派である、そうも思った。
見方を変えれば、医療事故を専門医が行っても上手く行かなかったのだから仕方ないという専門故の単純な免罪符にしていけないということでもあり、常に専門でも非専門でも気になる点があれば常に検証が欠かせないということでもある。
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さらに話を広げれば報告すべき医療事故とは何ぞや、と言うことにも係る問題でもある。この論争は法医学会ガイドラインがH6年に発表されて以来H27年に一段落して医療事故調査制度が出来るまで喧々諤々と続いたのを覚えている。
医療過誤のない医療事故もあるし、知識や腕が未熟故の医療事故もあり得るし、どんなに腕が良くても100%上手く行くとは限らないし、これが医療である。あってはならないが有り得る宿命を背負っているという意味で航空機事故と医療事故は似ていると言われてきた。そのために医療事故に対しては責任追及よりも再発防止が優先される。これは理屈上は万人が認めることでもある。しかし現実の行政上運用になると立場立場で齟齬が生じてしまう。総論賛成・各論反対である。
医療に限らないことではあるが、犯罪性があればそれ相当のペナルティを個人に与えられるべきなのは当たり前である。しかし必要以上に医師個人への責任追及を行えばそれに対抗する防衛医療・萎縮医療に傾くのもこれまた当たり前のことである。そして防衛医療に傾けば傾くほど本来なら助けられるべき命も助けられなくなるということもこれまた当たり前の流れである。例えば90%助けられないとしても10%の可能性があれば手を出すかどうかはその防衛医療のレベルに依存する、勿論医師の独断ではなく本人や家族とのI.C.の上での場合である。
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