ある介護老人の短文――心の吐露
2021-03-13


ある介護老人の短文――心の吐露

 長らく疎遠であった足利のいとこが最近亡くなり、遺族の奥様からご報告のお手紙を頂いた。自分より5才年上であるが既に10年前から逝った時の自らの希望を書いたご本人のメモが見つかったとのこと。その中に、下記の詠み人しらずの短文もあったようで、同封されていた。優しい心根のDrであったようなので、恐らくご本人も大切な短文としてとっておいたものかもしれない。同封の意図は書いてなかったけれども、奥様もそれが分かっていたからこそ何も言わずに同封して下さったのかもしれない。妙に胸に刺さった短文であった。
 高齢者の医療介護業務に従事する者は、この様なお心を皆が奥に秘めているかもしれないことを忘れてはならないと訴えているような、自らを戒めてくれるような短文であり忘れてはならないと思うのでここにメモしておく。
以下がその短文―――

君は老ひたる者の悲しみを知るまい。
歳老ひて生きつづけるとき
もはや 道化して過ごすしかないことを知るまい。
そして私も それを知らなかった。

思いもしないものによって
老人は 『老い』 という オリ につながれてゐる。
つなぐ側も つながれてゐる側も
つゆ それを知ることなく。
君は 老の悲しみを
知ってゐるか。
       72歳女性 老人ホーム入所中  S.60年

―――以上。
[医療メモ]
[徒然なるメモ]

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